「チャイバ」

 

 日本語のローマ字表記には「訓令式」と「ヘボン式」がある。「岐阜市」や「土」なら前者は「Gihusi」「Tuti」と書き、後者は「Gifushi」「Tsuchi」と書く。世の中の大勢はヘボン式なのだが、文部省方式の訓令式にこだわる人はまだ多い(昔のローマ字の授業で習った人)。彼らがいうには、「千葉」をヘボン式で書くと「Chiba」になるが、これではフランス人は「シバ」と読み、ドイツ人は「ヒバ」、イタリア人は「キバ」になる。そして英語圏の人も「チャイバ」と読むに違いないというのだ(ま、確かに「ニコン」は「ナイコン」だからね)。


写真:ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ駅(ウソ。大分の日豊線・宇佐駅)

 「まあ英米人もそんなに融通がきかないわけじゃない。外国の地名を読むときはそれなりにローマ字読みしている。『チャイバへ行きたい』なんていわないのである。だから私は無駄な抵抗はやめてヘボン式にしてしまえばいいのに、とも思う」。こう書いているのは、今尾恵介さんという人。「地図の遊び方」(新潮OH!文庫)に出ている愉快な話なのである。ひたすら地図を眺めて暮らすエッセイストだそうで、この本には地図の話だけでなく、地名、歴史から上のような話までいっぱいうんちくが載っていてたのしい。ついでに同書からもうひとつ「長い駅名」の話。日本は熊本・南阿蘇鉄道の「南阿蘇・水の生まれる里白水高原」、世界では英国ウェールズにある
「Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllandysiliogogogoch」(ヨ・読めない!)だってさ。

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